読書メモ」カテゴリーアーカイブ

デズモンド・モリスについて

購読しているsynodos+αのno.182号に、山本ぽてとさんの「おっぱいが重たい(後編)」というエッセイがあり、それを読んで少々驚いた。

 

エッセイのとっかかりは、京都新聞の公式twitterが2015年1/12にツイートした「おっぱいは誰のものか?」というツイートで、これをめぐる炎上話である。

 

驚いたのは、ぽてとさんのエッセイから、「おっぱいは誰のもの? そんなもの自分のものに決まってるじゃん。男のために進化したんだなんていう男性優位の異性愛主義の投影はやめてくれ」という主張があるからでは当然ない。男性の性的視線に距離をとって語りながらも、ぽてとさんが、なんだかんだ男女のわいだんをネタ化して、歓心を買ったエッセイを書いていたからでもない。

 

ただ、数年前に読んで、なるほど と考えるところがあった、デズモンド・モリス(『裸のサル』)の名があり、「おっぱい男のために進化したんだ」説の端緒とされていたから、にわかに驚いた、ただそれだけの話である。 続きを読む

江戸時代の「男性」のセクシャリティー 前髪、男根

1. 立髪 pdf20150415 立髪

 

この髪型は、おつがみ=立髪 という、安土桃山時代の髪型であり、大原梨恵子によれば、「浪人とか病気の者がこの髪風であったが、(略)戦国期の余波もあって、浪人にとどまらず、仲間(ちゅうげん)、小者などまで一種の伊達風俗としてこの髪風を好んだ」(58頁)という。

 

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大塚英志『「おたく」の精神史』

 

大塚英志『「おたく」の精神史』を一気に読んで、正直励まされた思いに駆られている。
批評の営みとは、歴史を書くことの営みとは、極めて厳密に「客観的」に書かれてしかるべきものである、そう多くの人が思っていることだろう。だとしたら、そう考える人は、この本の「主観的」な叙述に戸惑うことになる。
実際、本書のタイトルにあるように、大塚は決して「オタク」とは書かず、あくまで彼にとっての「おたく」にこだわり続け、そして東浩紀からは、大塚は自分の経験を一般化するのを拒んでいると批判も受けたという。
しかし僕からすると、この本の魅力と本質は、「おたく」と書き続けた事だったように思われる。大塚自身はこう述べる。

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國分功一郎『来るべき民主主義』

國分功一郎『来るべき民主主義』(幻冬舎新書、2013年)を読んだ。

 

 

本書は、2009年に、東京都小平市で、地域住民の憩いの場となっている雑木林や玉川上水を貫通する巨大な道路建設計画が明らかになり、以後、それを巡って、著者ら住民がなんとか計画の見直しを求めて行政と格闘していった記録であるとともに、それを政治哲学の問題として考察した書である。

 

 

行政と格闘と言うと、いわゆる住民の反対運動と捉えられるが(それ自体はもちろん悪くもない)、小平のこの運動が他の単純な反対運動と違って見えるのは、この運動が、道路建設の反対を求める運動ではなく、この計画に対する住民投票を求める、それも公正で住民達も納得できる住民投票を求める運動である点だ。

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足元の耳で聴く、貝の歌――金子光晴、東南アジア的土着性、存在感情

「題名のない残念会」[1]http://www.ustream.tv/recorded/53750444という友人が主催のラジオに参加させてもらい、金子光晴について少し語った。そこでは緊張と、緊張をはぐらかすためのお酒で、うまく言いたい事をいえなかったり、終わってすぐ気付くちょっとした間違いもあったこともあって、さらに後から言いたかった事がより整理されてきたり等々あり、改めて文章化してみることにした。

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References

References
1 http://www.ustream.tv/recorded/53750444